茨城県水戸市の環境中の放射線量と水の放射線量について、研究室で解析したデータを公開します。
福島第一原子力発電所の爆発事故以来、我々の研究室ではGMサーベイメータを使って水戸市の放射線量を 確認しています。まず放射線量の総量に関しては、茨城県のホームページで公開されているデータの方が精度 が高いので、そのデータをプロットした図を以下に示します。爆発事故以前の水戸市の環境中の放射線量は 0.05μSv/h程度でした。
青点は、2011年3月15日から4月13日まで10分間隔で測定した茨城県水戸市石川の放射線量(茨城県環境放射 線監視センター発表)で、縦軸の単位はμSv/hです。紫点は、2011年3月15日から4月13日まで10分間隔で測定 した茨城県水戸市の降水量(気象庁発表)で、縦軸の単位はcmです。3月15日と16日にある放射線量のピークは 原発建屋の水素爆発によるものであり、また21日付近で放射線量がさらに上昇したのは、原発事故以降初めて 水戸市にまとまった雨が降ったためだと考えられます。3月24日以降の降水は、少なくとも水戸市の環境中の 放射線量にはあまり影響を与えていません。
2011年3月23日に水戸キャンパスの理学部実験室内で環境中のγ線を24時間計測しました。使用したのはGe半導体検出器です。 検出された福島第一原子力発電所事故に由来すると思われる放射性核種はI-131(半減期8.02日), Te-132(半減期3.2日), I-132(半減期2.3時間),Cs-134(半減期2.1年), Cs-137(半減期30年)でした。下の図はその計測をプロットしたものです。
横軸はエネルギー(単位keV)で、縦軸はを24時間の放射線の計数です。グレーで表されたデータは事故以前に計測した 環境放射線です。次の図は4週間後の4月20日に同様の計測を行って得られたデータをプロットしたものです。半減期 の短いTe-132, I-132のピークはなくなりました。I-131の計数も4週間前のデータと比較するとかなり少なくなってい ることが分かります。半減期の長いCs-134, Cs-137の計数には目立った減少は見られません。
2011年3月24日から4月13日まで10分間隔で測定した茨城県水戸市石川の放射線量(茨城県環境放射線 監視センター発表)を数式でfitさせた図を以下に示します。
赤線はFitによって得られた数式をプロットしたもので、その式は [放射線量μSv/h] = 0.185 e^(-0.000915 t) + 0.129 で与えられます。横軸は10分を1目盛にしており、縦軸の単位はμSv/hです。放射性物質としては I-131、Cs-134、 Cs-137 などが検出されており、また放射性物質の拡散は気象条件に大きく左右されるので、このような単純な数式 でのFitはあくまでも目安です。
水戸市の上水についての放射線量のデータを以下に示します。2011年4月4日午後2時頃に採取した上水を ペットボトル2l容器に入れて、4日午後から21時間、放射線量の測定を行いました。 横軸はエネルギー(単位keV)で、縦軸は上水を21時間測定した際の放射線量の計数です。上水からは主に I-131が検出されました。またグラフでは見えにくいですが、Cs-134とCs-137もピークで40カウント程計測されています。 なお、4月4日の時点でI-131のピークは800カウントほどありますが、4月15日に同じ上水を再計測したところ I-131のピークは340カウントほどまで減少しました。
2011年4月22日午後6時頃に採取した水戸市の上水をペットボトル2l容器に入れて、22日午後から21時間 放射線量の測定を行いました。I-131、Cs-134、Cs-137が検出されています。I-131のピーク周辺のカウント数は4月4日の 上水と比べて 1/6 程度まで減少しています。
2011年5月10日午後2時頃に採取した水戸市の上水をペットボトル2l容器に入れて、10日午後から21時間 放射線量の測定を行いました。主にCs-134が検出されています。I-131のピーク周辺のカウント数は4月4日の 上水と比べて 1/60 程度まで減少しています。
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